中国発「Manus」完全自律AIエージェントとは?特徴・使い方から招待コードまで徹底解説

著者: 仲山 隼人 (Hayato Nakayama) 25/03/17 23:03

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近年、AI技術は急速に進化し、私たちの生活やビジネスに深く浸透しています。特に、完全自律型AIエージェントの分野では、新たな革新が次々と登場しています。その中でも、中国発のManusは、従来のAIアシスタントとは一線を画す存在として注目を集めています。

しかし、この革新的なAIはまだ一般公開されておらず、招待制でのみ利用可能です。

そのため、Manusの招待コードはオンラインで高額取引され、100万円近くの価格がつくこともあります。このような状況はManusへの期待の高さを示していますが、一方でセキュリティやプライバシーの懸念も指摘されています。

本記事では、Manusの開発背景、技術的特徴、DeepSeekとの比較、活用事例、入手方法、セキュリティリスク、そして今後の展望までを詳しく解説します。AIエージェントの最前線を知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

 

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出典:DevelopersIO

Manusとは?

Manus(マヌス)」は、中国のスタートアップ企業Monica(モニカ)によって開発された世界初の完全自律型AIエージェントです。単なるチャットボットや検索エンジンの改良版ではなく、ユーザーの指示を一度与えるだけで計画立案から実行、結果の提供まで自律的に行える点が最大の特徴です。
 
公式サイトによれば、Manusは「思考するだけでなく結果を出す」AIであり、人間の“頭脳”と“手”をつなぐ存在として位置づけられています。
 
例えば、調べものやデータ分析、レポート作成といった複雑なタスクでも、Manusに任せれば人間が休んでいる間に完了してしまうと謳われています。
 
 
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 出典:Manus
 
このようにManusは汎用人工知能エージェントを標榜しており、人間のアシスタントを超えて「独立した行為主体」として機能することを目指しています。金融取引の分析から旅行プランの作成まで、多彩な分野の業務を自動化し、人間の判断や操作を待たずに自律的に動く点で画期的な存在です。
 
 
 

どのように開発されたのか?

Manusを開発したのは、中国人起業家の肖紅(Xiao Hong)氏らによるAIスタートアップ「Monica」です。
 
Monica社は2022年に設立されたButterfly Effect(バタフライ・エフェクト)という企業グループの一部と見られており、北京と武漢に拠点を置き、従業員は数十名規模と伝えられています。
 
Monicaは当初、2023年3月にMonica.imというAIアシスタントサービスを公開し、OpenAIやDeepSeekなど複数の大規模言語モデル(LLM)を接続した汎用AIアシスタントを提供していました。
 
ManusはMonicaが満を持して2025年3月5日に発表した新プロダクトであり、そのローンチ直後から世界中のAIコミュニティで大きな話題となりました。
 
実際、ByteDance(バイトダンス)社(TikTokの親会社)が2024年初頭にButterfly Effect社の買収を試みたとの報道もあり、中国のAIスタートアップとして早くから注目を集めていたようです。
 
なお、Manus発表直後にはアクセスが殺到し、サーバーが一時過負荷になる事態も起きました。
 
 
 

Manusの特徴・技術

Manus最大の特徴は、複数のAIモデルやツールを組み合わせてタスクを自律遂行する高度なエージェント機構にあります。
 
従来のChatGPTなどの対話型AIがあくまでユーザーからの逐次入力に応じるのに対し、Manusは一度ゴール(目的)を与えれば自ら考え、外部リソースにアクセスし、必要に応じてコードを書いて実行し、結果をまとめ上げます。
 
その意味で「無限の集中力を持つ人間」がデジタル世界を駆け巡るような動作をするのです。
 
 

マルチエージェントとラッパー技術

 
 
 
Manusの内部では、複数のエージェント(サブAI)が役割分担して協働しています。
 
開発陣によれば、ManusはAnthropic社のClaudeやAlibaba(阿里巴巴)社のQwenといった強力なLLMを組み合わせて「エージェンティックAIモデル」を構築したとのことです。実際、ManusはAnthropicのClaude 3.5(内部コードネームSonnet)や中国発の複数のファインチューニング済みモデル(例えばQwenなど)を裏側で活用していると報じられています。
 
一部の専門家からは「ManusはAnthropic Claudeのラッパーに過ぎないのではないか」との指摘もあります。Analytics India Magazineは「(Manusは)ClaudeをAPI経由で使いやすくまとめただけの存在」と評しつつも、「それでも尊敬に値する」と評価しています。
 
また、GitGlance創設者のRichardson Dackam氏は、単なる既存技術の寄せ集め以上の革新があることを示唆する発言をしています。
 
 
 

他AIにない強み: 非同期実行と動的適応

 

 

Manusの強みは、非同期実行と動的な計画適応能力にあります。

クラウド上でタスクを自律的に進め、指示後は追加操作なしで完遂します。実際のデモでは、不動産情報を検索・分析し、Pythonコードを生成・実行して条件に合う物件を特定しました。

また、実行中に新たな情報を得るとリアルタイムで計画を調整します。ChatGPT-4やGeminiと異なり、人の介入なしで動くことも強みです。

グラフ・PDF・スプレッドシートなどの出力パーソナライズ機能も備え、マルチエージェントシステムによる生産性向上が期待されます。

 
 
 

ManusとDeepSeekの比較

deepseek_top出典:株式会社ハイレゾ

 

Manusの登場時によく引き合いに出されたのが、中国製LLMとして先行していたDeepSeek(ディープシーク)ですDeepSeekは中国の小規模スタートアップが開発したオープンソースの大規模言語モデルで、OpenAIのモデルに匹敵する性能を持つとして2024年頃に大きな反響を呼びました​。

 

技術面の比較

 

 

DeepSeekは大規模言語モデル(LLM)であり、GPTシリーズのように自然言語での応答品質(知識量や推論力)によって評価されます。

一方、Manusはエージェントプラットフォームであり、複数のLLM(GPT系や独自モデル)を統合し、ウェブ閲覧やアプリ操作などのタスクを自律的に実行します。DeepSeekが「頭脳」に例えられるのに対し、Manusは「頭脳+手足」を備えている点が大きな違いです。

 

なぜ比較されるのか

 

 

DeepSeekは、中国が独自のGPTレベルのAIモデルを開発できる実力を示しました。

一方、Manusはそのようなモデルを活用し、実世界の問題を解決する自律エージェントの新たな可能性を提示しています。両者は「中国発のAI革新」として注目される点で共通していますが、役割は大きく異なります。

また、2025年3月にはAlibabaがManusの開発元と提携し、自社のAIモデル(Qwenなど)とManusの統合を発表しました。これにより、Manusは高度なAIモデルを活用する次世代プラットフォームとしての位置づけをさらに強化しています。

 

 

ベンチマーク・他の主要AIとの比較


GAIAベンチマークでの評価

 

 

Manusは、AIアシスタントの問題解決能力を測るGAIAベンチマークで、すべての難易度レベルにおいて最高性能(SOTA)を達成したとされています。

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出典:Manus

特に、OpenAIのエージェント「Deep Research」(GPT-3.5系o3モデル)を上回るスコアを記録し、世界トップクラスの汎用エージェントであると主張されています。

 

他の主要AIとの比較

 

 

Manusはエージェントプラットフォームであり、GPT-4やClaudeなどのモデルを統合してタスクを遂行します。そのため、単純な言語モデル同士の比較はできませんが、タスク達成能力では優位とされています。

例えば、ChatGPTやClaudeは優秀な回答者ですが、自発的にウェブ検索やツール操作を行いません。

一方、Manusはそれらのモデルを活用しながら、必要なアクションを自律的に実行できます。GoogleのGeminiもマルチモーダルAIとして注目されていますが、あくまで強力な生成AIであり、Manusのような自律的エージェントとは異なるカテゴリに属します。

 

Manusの活用事例

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出典:Manus
 
 
Manusは汎用エージェントであるため、その活用領域は多岐にわたります。
 
公式サイトやデモ動画で紹介されているユースケース(一例) を挙げると
 
旅行計画
 
 
希望の期間・予算・目的地を伝えるだけで、Manusが詳細な旅行プランを作成し、旅程表や観光ガイドブックまで自動生成。


金融分析
 
 
株価データの分析から企業の財務諸表の読み取りまで対応。実例として「テスラ株の動向を深く分析して」と依頼すれば、関連ニュースの収集、過去データのチャート化、将来予測まで一括で行います。


教育コンテンツ生成
 
 
学習教材やプレゼン資料の作成にも活用可能。Manusは動画スライドの形で中学生向けに物理の運動法則を解説するプレゼンを作成した例もあります。


比較検討・レポーティング
 
 
複数の選択肢を比較するレポートを自動作成。例えば保険商品の比較表を作ったり、業界内の競合製品の調査レポートをまとめたりといったことも可能です。


ビジネス業務の代行
 
 
B2B向けに、特定条件に合うサプライヤーのリストアップを行ったり、巨大なデータベース(例: Y Combinator出資企業一覧)から条件に合う企業リストを抽出するなど、企業のリサーチ業務を肩代わりする用途も紹介されています。

 
 
一方で、「マルチエージェントの動き自体はユーザーから見えにくいが、裏でちゃんと動いているようだ」「完全に任せきりにするにはまだ少し不安もある」といった慎重な意見もあり、現段階では試験的に一部業務で活用しているケースが多いようです。
 

「招待制」のManusの使い方・料金

利用方法

 

 

Manusは招待制のクローズドベータとして提供されており、招待コードが必要です。公式サイトの「Get Started」ボタンをクリックするとコード入力画面が表示され、未取得のユーザーは招待待ちリストに登録する形になります。

 

料金体系

 

 

2025年3月時点では正式な料金プランは未発表で、ベータ版ユーザーは無料で利用可能です。

しかし、クラウドリソースコストの関係から、正式リリース時には有料のサブスクリプション制になる可能性が高いと考えられています。特に、企業向けの課金サービスとして展開される可能性が指摘されています。

 

制限と現状

 

 

招待制のためユーザー数は厳しく制限されており、サーバー負荷の管理のためにタスク数や利用時間に制限がある可能性もあります。一部ユーザーからは「長時間利用でリソース上限に達して停止する」との報告もあります。

 
 

Manusの招待コードとその価値

入手方法

 

 

Manusの招待コードは公式からの招待が基本で、以下の方法で入手可能です。

  1. 公式サイトで招待リクエストを登録し、承認を待つ。
  2. AI研究者や業界関係者として開発チームから直接招待を受ける。

しかし、一般ユーザー向けの招待枠が極めて少ないため、二次流通でコードを購入する手段が広がっています。中国のフリマアプリやeBayでは、数千ドル(日本円で数十万円~100万円)で取引されている例もあり、非常に高額です。

 

高額になる理由

 
 
  1. Manusの魅力と期待の高さ
    Manusが先進的かつ実用性の高いAIエージェントとして非常に魅力的に映っていることです。
    特にビジネスパーソンや開発者の間では、「Manusを使えば競合に先駆けて業務効率化や新サービス開発が図れるのではないか」という期待があり、その投資として高額を払ってでも使ってみたいという心理が働いています。

  2. 供給の極端な少なさ
    前述の通り公式からの招待はごく一部に限られており、正式リリース予定も明らかでない中、限られたコードが売り手市場になっています。早い段階でコードを取得した人が高値で転売するという構図が生まれてしまっているのです。

 

Manusのセキュリティ

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出典:GMO Internet Group
 
 
高度な自律性を持つManusだからこそ、セキュリティとプライバシーの問題は重要な検討事項です。
 
まず、Manusに企業内データや個人情報を預けてタスクを処理させる場合、クラウド経由で機密情報が外部に漏洩するリスクが懸念されます。このため、企業利用を考えるならデータのマスキング(匿名化)や、必要に応じてプライベートクラウド版Manusの提供を検討するべきとの指摘があります。
 
次に、Manus自身が不正操作されるリスクも考えねばなりません。実際、AI専門家の間では「自律エージェントがデータポイズニング(悪意あるデータ注入)や悪用に対して脆弱ではないか」との議論があり、ManusのようなAIをサイバー兵器化できてしまうリスクも指摘されています。
 
プライバシー面でも、Manusはユーザーデータを学習・適応に使うため、その扱いが適切かどうか監視が必要です。開発元のButterfly Effect社はプライバシーポリシーを公開し、ユーザーの個人情報保護に努める姿勢を示していますが、具体的な安全策の詳細は不明です。
 
こうした中、専門家はManusの導入・利用に際して以下のような安全策を提言しています
 
人間の関与(Human-in-the-Loop)の維持
 
 
重要な判断や機密データの扱いにおいては必ず人間が最終承認する体制を保ち、AIの誤作動や逸脱に備える。完全自律といえども、人間の監督なしに暴走すれば大きなリスクを孕むためです。

セキュリティ対策の徹底
 
 
内部アーキテクチャやシステムプロンプトへのアクセスを制限し、不必要な権限をManusに与えない。APIやプライベート環境を活用し、敏感情報が外部に出ない設計とする。

段階的な導入
 
 
最初から全業務を任せるのではなく、リスクの低い領域から段階的にManusを導入する。システムや運用フローが安定してから適用範囲を広げることで安全性を高める。
 

これらはAI一般にも言えることですが、特にManusのような強力な自律AIには不可欠です。Manusを活用するには技術的な利点とリスクを正しく理解し、ガバナンス体制を整えることが重要と言えるでしょう。
 
 

 OpenManusについて


OpenManus
出典:AI総合研究所

 

Manusの登場を受け、オープンソースコミュニティで「OpenManus」というプロジェクトが立ち上がりました。これはManusの自律エージェント機能をオープンな環境で再現することを目的とした試みで、PythonやJavaScript、Dockerを用いたモジュール構造で開発が進められています。

OpenManusは公式のManusとは異なり、クローズドな高性能LLMを含まず、代わりにLlama2やDeepSeekなどのオープンなモデルを活用しています。

また、Manusの機能解析の一環として、「Browser Use」というウェブ操作支援ライブラリが注目され、利用が急増しています。

Manusはブラックボックスな閉源システムである一方、OpenManusは誰でも利用・改良できるオープンな実験的クローンのような位置づけです。しかし、Manusの開発チームも一部の技術をオープンソース化する予定を示しており、今後、両者の相互作用によってエージェント技術が進化する可能性があります。

 

 

まとめ

Manusは、中国発の自律型AIエージェントで、LLM技術を活用し指示なしでタスクを遂行できる革新的なシステムです。高い自律性で注目を集める一方、セキュリティや倫理面での課題も指摘されています。

今後、Alibabaとの協業や競合技術の登場により、AIエージェント市場は急速に拡大する見込みです。AIが「助手」から「独立したパートナー」へと進化する中、Manusはその先駆けとして歴史に名を残すかもしれません。