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生成AI26/04/14 | 読了 8分

経営者のAIの始め方|最初の90日でやるべき仕込みの全手順

仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
代表取締役社長
経営者のAIの始め方|最初の90日でやるべき仕込みの全手順Search Eleven

AIを始めたいが、経営者として最初に何をすればいいか分からない。そう感じている方は多い。結論から言うと、いきなり全社展開を狙うのが失敗のもとで、最初の90日は「仕込み」に徹するべきだ。本記事では、経営者のAIの始め方を、90日を3つの期間に分けた具体的な手順として整理する。

この記事でわかること

  • 経営者のAI導入がつまずく本当の理由
  • 最初の90日を3期間に分けた仕込みの全体像
  • 各期間でやるべきことと判断の順番
  • 90日で成果が出たかを見極めるチェックの観点

なぜ経営者のAIの始め方は「全社展開」から入ると失敗するのか

経営者のAIの始め方で最も多い失敗は、最初から全社展開を狙うことだ。結論として、土台が無いまま広げると、現場が混乱し、効果も測れず、半年で立ち消える。最初の90日は広げずに「仕込む」のが正解だ。

私はAdobe、Appier、ThinkingDataで外資のマーケティング責任者を務め、その前は法人営業の現場にいた。今は生成AIのプロダクトを自分で開発している。その経験から言えるのは、AI活用の成否は、ツールの性能ではなく「最初の3か月で何を仕込んだか」でほぼ決まる、ということだ。

全社展開を急ぐと、目的が曖昧なままツールだけが配られる。すると現場は「結局どう使うのか」が分からず、利用は一部の人で止まる。経営者が見たかった成果も出ない。

だからこそ、最初の90日は対象を絞り、勝ち筋を一つ作ることに集中したい。次章から、90日を3つの期間に分けて具体的に見ていく。

90日プランの全体像|3つの期間で何を仕込むか

最初の90日は、3つの期間に分けて考えると迷わない。結論として、第1期で土台を固め、第2期で小さく試し、第3期で勝ち筋を見極める。広げるのは90日の後でいい。

各期間の役割は次のとおりだ。前の期間の成果が次の前提になるため、順番を飛ばさないことが重要になる。

期間主なテーマ終了時の状態
第1期 1〜30日土台づくり目的と対象業務が言語化されている
第2期 31〜60日試験導入1つの業務でAIが動いている
第3期 61〜90日検証と判断広げるか見送るかを決められる

ここで言う「仕込み」とは、派手な成果を出すことではない。広げる前に、自社で再現できる勝ちパターンを一つ作ることだ。その一つがあれば、その後の展開は驚くほど速くなる。

次の章から、各期間でやるべきことを順に解説する。

第1期(1〜30日)|目的と対象業務を言語化する

最初の30日でやるべきは、ツール選びではなく目的の言語化だ。結論として、「AIで何を変えたいのか」を経営者自身の言葉で定義できないうちは、何を導入しても空回りする。まずはここを固めたい。

最初に決めるのは、AIで「コストを下げたいのか」「売上を上げたいのか」だ。この2つは選ぶ施策も評価指標もまったく異なる。効率化は既存業務の時間短縮で測り、売上創出は増えた商談や受注で測る。私たちサーチイレブンが一貫して重視するのは後者だが、出発点としてどちらを優先するかを先に言語化することが大切だ。

次に、対象業務を1つに絞る。広げたい気持ちを抑え、件数が多く判断のばらつきが少ない業務を選ぶ。候補は次のような領域だ。

  • 議事録の作成と要約
  • 問い合わせへの一次対応
  • 提案書やメールの下書き
  • 社内向けの情報検索や要約

この期間にやってはいけないのは、いきなり高額なツールを契約することだ。30日の段階では、まず無料や低価格の生成AIで業務に当ててみて、相性を確かめれば十分である。第1期の終わりに「目的」と「対象業務1つ」が紙に書けていれば、合格だ。

第2期(31〜60日)|小さく試して使える形にする

第2期は、絞った1業務でAIを実際に動かす期間だ。結論として、全社ではなく1チーム、できれば数人の協力者と一緒に、現場で回せる手順まで落とし込む。ここで「使える形」を作れるかが90日の山場になる。

私が自分でプロダクトを開発していて痛感するのは、AIは「導入した瞬間」ではなく「現場の手順に組み込んだ瞬間」に効き始める、という点だ。どんなに優れたモデルでも、誰がいつどう使うかが決まっていなければ放置される。

この期間でやるべきことは、次の手順で進めると整理しやすい。

  1. 対象業務の今のやり方を書き出す
  2. そのどこをAIに任せるかを決める
  3. 協力者と一緒に1〜2週間使ってみる
  4. うまくいかない点を毎週ふり返り、手順を直す
  5. 「これなら他の人も使える」という手順書にまとめる

ここで重要なのは、完璧を目指さないことだ。最初の出力が荒くても、指示の出し方や手順を直せば精度は上がる。むしろ、現場が「自分たちで直せる」状態になることが、定着の条件になる。第2期の終わりに、1業務でAIが日常的に使われ、簡単な手順書がある状態を目指したい。

第3期(61〜90日)|検証して広げるかを判断する

最後の30日は、試した結果を検証し、広げるかどうかを決める期間だ。結論として、感覚ではなく「狙った指標が動いたか」で判断する。ここを曖昧にすると、なんとなく続けるか、なんとなく止めるかになってしまう。

判断の前提として、第1期で決めた目的に対応する指標を見る。効率化を狙ったなら削減できた時間、売上創出を狙ったなら増えた商談や対応件数だ。具体的な数値目標は事前に置いておき、そこに近づいたかで評価する。

広げる判断をするなら、次の観点を確認したい。

  • 狙った指標が、試す前より良くなっているか
  • 協力者以外でも、手順書を見れば再現できそうか
  • 続けるための運用コストが見合っているか
  • データが一箇所に貯まり続ける形になっているか

ここでデータの集約は見落とされやすいが重要だ。顧客情報や履歴が個人のExcelに散らばったままだと、展開しても全体像をつかめない。私たちはHubSpotのソリューションパートナーとして導入を支援する際も、「ツールを入れること」より「データが一箇所に貯まる運用を作ること」を重視している。第3期の終わりに、広げる・直して再挑戦する・見送る、のいずれかを根拠を持って選べていれば、90日の仕込みは成功だ。

90日を成功させるために経営者がやるべきこと

90日プランを動かすうえで、経営者本人の関わり方が成否を分ける。結論として、現場に丸投げせず、目的の言語化と判断だけは経営者が担うべきだ。手を動かす必要はないが、旗は自分で立てる必要がある。

経営者がやるべきことと、現場に任せてよいことは分けて考えるとよい。

  • 経営者がやること: 目的の定義、対象業務の決定、90日後の判断
  • 現場に任せること: 具体的な使い方の工夫、日々の手順改善
  • 一緒にやること: 月1回のふり返りと方針の微調整

ここで補足したいのは、AIの専門知識は最初から必要ない、という点だ。技術の細部は試しながら現場が学べばよい。経営者に求められるのは、「何のためにやるのか」を曖昧にしないことと、90日後にきちんと判断を下すことだ。

私自身、外資AI企業でのマーケティングと、自分でのプロダクト開発の両方を経験して確信しているのは、成果を出す組織はツールに詳しいのではなく、目的と判断がはっきりしている、という共通点を持つことだ。90日の仕込みは、その土台を作る期間にほかならない。

よくある質問(FAQ)

Q. 経営者はAIをまず何から始めればいいですか

まず「AIで何を変えたいのか」を言語化することから始めるとよい。コスト削減か売上創出かを決め、対象業務を1つに絞る。ツール選びはその後でよく、最初の30日は目的の定義に充てるのが失敗しにくい順番だ。

Q. AIの専門知識がない経営者でも始められますか

始められる。技術の細部は試しながら現場が学べばよく、経営者に必要なのは目的を決めることと判断を下すことだ。むしろ最初から完璧な知識を求めると、いつまでも着手できなくなる。

Q. 90日プランでいくらくらい費用がかかりますか

最初の30日は無料や低価格の生成AIで試せるため、大きな費用はかからない。本格的なツール契約は、第3期で広げると判断してからで間に合う。費用は対象業務や規模で変わるため、小さく試して見極めるのが安全だ。

Q. 1人や少人数の会社でもこの90日プランは使えますか

使える。むしろ対象を絞りやすく、判断も速いため小規模ほど相性がよい。協力者が確保しにくい場合は、経営者自身が第2期の試し役を兼ねる形でも進められる。

Q. 全社にAIを広げるのはいつから始めるべきですか

90日の仕込みで勝ち筋を一つ作ってからが望ましい。土台が無いまま広げると現場が混乱し、効果も測れない。第3期で「再現できそうだ」と判断できた業務から、段階的に広げるのが安全だ。

Q. 90日で成果が出なかった場合はどうすればいいですか

成果が出なくても失敗とは限らない。対象業務の選び方や手順を見直し、もう一度試す価値はある。それでも合わなければ、その業務はAIに向かないと判断し、別の業務に切り替えればよい。

まずは90日の仕込みを設計するところから

経営者のAIの始め方でつまずく最大の原因は、目的を決めないまま全社展開を急ぐことだ。最初の90日を、土台づくり・試験導入・検証の3期間に分けて仕込めば、勝ち筋を一つ作ってから安全に広げられる。


とはいえ、自社の場合どの業務から始め、どんな指標で測るべきかは、状況によって変わる。サーチイレブンでは、自社のAI活用の現在地を把握する無料診断と、90日プランの設計についての相談を受け付けている。何から手をつけるか迷っているなら、まずは現状の整理から一緒に始めたい。

仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
代表取締役社長 | Search Eleven

西オーストラリア大学を卒業後、日本の教育最大手で法人営業としてキャリアをスタート。複数の外資系企業のマーケティング責任者を経験。2022年に株式会社サーチイレブンを立ち上げ。著書に「ゲームデータアナリティクス よりよい開発・運営に向けたデータ分析の教科書」(翔泳社)。

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