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経営AX26/05/26 | 読了 8分

外資AI企業のマーケから生成AI開発で見えた日本企業の課題

仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
代表取締役社長
外資AI企業のマーケから生成AI開発で見えた日本企業の課題Search Eleven

「AIを試したが、成果につながらない」。多くの日本企業がこの段階で止まっています。結論を先に言うと、日本企業のボトルネックは技術力ではなく、意思決定の構えと設計の不在にあります。この記事では、外資のAI企業でマーケを率いた後、自社で生成AIプロダクトを開発してきた立場から、海外と比べて何が詰まっているのかを一次経験で整理します。

この記事でわかること

  • 日本企業がAIで成果を出せない、本当のボトルネックの正体
  • 外資AI企業と日本企業で決定的に違う、意思決定の進め方
  • 技術ではなく「設計の不在」が成果を止める理由
  • 自社で生成AIを開発して見えた、導入で外しやすい論点
  • 経営として明日から動かせる、最初の一歩

日本企業のAI活用は、なぜ成果で止まるのか

結論として、止まる原因の多くは技術ではなく経営の構えです。ツールは世界中どこでも同じものが手に入ります。差がつくのは、それをどう意思決定し、自社の業務へどう接続するかの設計です。

理由はシンプルで、AIが「導入して終わり」の道具ではないからです。生成AIは賢い部品ですが、単体では売上も利益も生みません。どの業務に当て、誰が結果を検証し、既存の仕組みへどうつなぐか。この設計が伴わないと、試した事実だけが残り、成果が宙に浮きます。

たとえば「議事録の要約をAIに任せる」だけなら、誰でもすぐ試せます。しかし商談の録音を取り込み、要点を抽出し、営業システムへ自動で記録するところまで通すには、業務の分解と接続の設計が要ります。多くの企業は前者で満足し、後者に踏み込む前に検証を止めてしまう。ここが最初の詰まりです。私はAIプロダクトを売る前に、自分たちでこの溝を何度も越えてきたからこそ、その深さを実感しています。

外資AI企業と日本企業で、意思決定はどう違うのか

最大の違いは、決め方のスピードと前提の置き方です。外資は「不確実なまま小さく試し、走りながら直す」を当たり前にします。日本企業の多くは「確実になってから全社で進める」を志向します。AIのように結果が読みにくい領域では、この差が成果に直結します。

理由は、AIが事前に正解を保証しない技術だからです。生成AIは確率で答えを出すため、やってみないと効くかどうかが分かりません。完璧な計画を待つほど、検証の機会そのものを失います。私がAdobeやAppierといったAI企業でマーケを率いていた頃、施策は「まず出して数字を見る」が基本でした。会議で完璧な資料を仕上げる時間より、現実のデータで判断する速さが重視されていたのです。

日本企業に多い進め方との違いを整理すると、次のようになります。

観点外資AI企業に多い日本企業に多い
着手の前提不確実なまま小さく試す確実になってから進める
検証の単位一業務に絞って素早く全社一斉に丁寧に
失敗の扱い学習として織り込む避けるべきものとする
決裁の速さ担当に権限を委ねる合意形成を積み上げる

どちらが優れているという話ではありません。ただAIのように学習で精度が上がる領域では、試行の回数が成果を左右します。回数を稼げない構えが、結果として日本企業のボトルネックになりやすいのです。

技術ではなく「設計の不在」が成果を止める

日本企業に足りないのは開発力ではなく、業務へAIを接続する設計です。優秀な人材も、使えるツールも、すでに国内に揃っています。それでも成果が出ないのは、AIと業務をつなぐ設計図を描く人が社内にいないからです。

壁は主に3つの層で現れる傾向があります。第一はデータの層で、AIに渡すべき自社データが整理されておらず、そもそも入力できないケースが多くあります。第二は業務の層で、出力をどの工程にどの形で戻すかが決まっていないと、AIの結果が使われずに終わります。第三は判断の層で、出力が正しいかを誰がどう検証するかの基準がないと、現場が安心して使い続けられません。

この3層は、ツールの設定画面だけでは埋まりません。自社の業務を分解し、どこをAIに任せ、どこを人が握るかを決める作業が要ります。外資が速いのは、技術が上だからではなく、この接続設計を小さく回す習慣があるからです。設計を外注に丸投げすると、汎用的な仕組みは入っても、自社に効く仕組みにはなりにくくなります。

自社で生成AIを開発して見えた、導入で外しやすい論点

私たちは効率化の道具を売る前に、自分たちで生成AIプロダクトを作る道を選びました。AI通話プロダクトのCallflow、イベント管理SaaSのEventZapを内製する中で、デモと本番運用の間にある深い溝を何度も経験しています。ここで見えた「外しやすい論点」は、外から眺めるだけでは決して掴めませんでした。

最も多い見落としは、AIの精度より「外れたときの設計」が成果を左右する点です。生成AIは確率で答えを出すため、必ず想定外の出力をします。きれいに動くデモを作るのは難しくありませんが、本番では言い淀みや曖昧な入力、想定外のパターンが必ず混ざります。完璧に当てる作り込みより、外れた前提でどう立て直すかの分岐を設計する方が、運用の安定にはるかに効きました。

もう一つは、成果指標を効率ではなく売上の側へ置けていない点です。多くの導入は「工数を何時間削れたか」で語られます。しかし経営が本当に見たいのは、削った時間が売上の創出にどう振り替わったかです。私はコードを書いて自分で試すたびに、企画段階の想定がいかに楽観的だったかを思い知らされました。作る側に回って初めて、効率化の先にある売上設計まで描かないと、AIは「便利だが効かない道具」で終わると体で分かったのです。

経営として、明日から動かせる最初の一歩

最後に要点をまとめます。日本企業のボトルネックは技術ではなく、不確実なまま小さく試す意思決定と、業務へAIを接続する設計の不在です。海外と比べて足りないのは才能や予算ではなく、回数を稼ぐ構えと設計図を描く役割です。

最初の一歩は、壮大なAI戦略ではありません。社内で最も手間がかかり、かつ効果が見えやすい一業務を選び、AIで動く小さな仕組みを一つ作って回すことです。完璧を待たず、外れる前提で立て直しながら、現場の反応を見て直す。この一回の往復が、「試したが止まる」から「成果が回り出す」への最短距離になります。

私たちが効率化ではなく売上の創出を掲げるのは、外資のマーケと自社開発の両方を通じて、AIが本当に効くのは人の工数を削った先だと確信したからです。手間を減らした分の時間を、人にしかできない価値の創出へ寄せ直す。その設計こそが、日本企業がAIの社会実装で次へ進むための本丸だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q. 日本企業がAIで成果を出せない一番の課題は何ですか

技術力ではなく、意思決定の構えと業務への接続設計の不在です。ツールは世界共通で手に入りますが、どの業務に当て、誰が検証し、既存の仕組みへどうつなぐかの設計が伴わないと、試した事実だけが残り成果が宙に浮きます。

Q. 外資AI企業と日本企業で、進め方はどう違うのですか

外資は不確実なまま小さく試し、走りながら直す進め方が基本です。日本企業は確実になってから全社で進める志向が強い傾向があります。AIは結果が読みにくいため、試行の回数を稼げる構えが成果を分けます。

Q. AI導入には高度な開発力が必須ですか

本格的な内製には作れる人材が要りますが、最初から大規模開発は不要です。狭い用途で小さく作り、外部と二人三脚で進める形なら、体制が小さくても着手できます。業務とAIをつなぐ設計を社内で握ることが先決です。

Q. 成果指標は何で測るべきですか

削れた工数だけでなく、削った時間が売上の創出へどう振り替わったかで測ることを勧めます。効率化を入口にしつつ、最終的にトップラインに効いたかを見ないと、便利だが効かない道具で終わりやすくなります。

Q. 「外れたときの設計」とは具体的に何ですか

生成AIは必ず想定外の出力をするため、外れた前提で誰がどう立て直すかの分岐を作り込むことです。きれいなデモではなく、曖昧な入力や想定外のパターンが混ざる本番を前提に設計すると、運用が安定します。

Q. 小さく試すとは、どこから始めればよいですか

全社的な仕組みを一度に作らず、手間がかかり効果が見えやすい一業務に絞ります。動くものを早く作り、現場の反応を見て直す往復を回します。完璧を狙わず、外れる前提で立て直しの分岐を用意するのが要点です。

Q. AIの社会実装で、経営がまず変えるべきことは何ですか

完璧を待つ構えを、小さく試して回数を稼ぐ構えへ変えることです。あわせて、業務とAIをつなぐ設計を担う役割を社内に置きます。才能や予算より、この二点の不在が成果を止めている場合が多くあります。


自社のどの業務なら、AIを小さく試して成果まで回せるか。外資の方法論と自社開発の知見をもとに、最初の一歩を一緒に見立てます。AIを使う段階と作れる段階の差を扱ったAX実装の記事も参考になります。まずは無料診断で、自社のボトルネックがどこにあるかを見立てるところから始めてみてください。

仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
仲山 隼人 (Hayato Nakayama)
代表取締役社長 | Search Eleven

西オーストラリア大学を卒業後、日本の教育最大手で法人営業としてキャリアをスタート。複数の外資系企業のマーケティング責任者を経験。2022年に株式会社サーチイレブンを立ち上げ。著書に「ゲームデータアナリティクス よりよい開発・運営に向けたデータ分析の教科書」(翔泳社)。

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