LLM(大規模言語モデル)とは?
LLM(Large Language Model/大規模言語モデル)とは、大量のテキストデータを学習し、人間のように自然な文章を生成したり、質問に回答したりするAIモデルのことです。ChatGPTやGoogle Bardのような対話型AIもLLMの一種です。
近年、AI技術の発展によってLLMは飛躍的に進化し、単なる文章生成だけでなく、プログラムのコーディング支援や医学研究、さらには法律文書の作成といった高度な領域にも活用されています。
今や、LLMは私たちの生活やビジネスに不可欠な技術となりつつあります。
LLMの歴史
1.初期の自然言語処理(NLP)
LLMの進化は、自然言語処理(NLP)の発展とともに進んできました。初期のNLPは、ルールベースや統計モデルが主流で、決まったパターンに従って処理するものがほとんどでした。
例えば、辞書ベースの翻訳ツールや、キーワードに応じた単純なチャットボットが代表的です。
2.機械学習・ディープラーニングの進化
2000年代に入り、機械学習が発展し、ニューラルネットワークを活用した手法が登場。特に、2010年代にはディープラーニングが注目を浴び、AIの性能が飛躍的に向上しました。
特に2017年にGoogleが発表した「Transformer」モデルが登場したことで、より高精度な言語処理が可能になりました。
3.近年のLLMの台頭
2020年にOpenAIが発表したGPT-3は、1,750億ものパラメータを持つLLMとして話題になりました。従来のAIと比べて圧倒的な情報量を扱えるようになり、自然な文章の生成能力が向上しました。
その後も、GoogleのPaLM、MetaのLLaMAなど、多くの企業が大規模な言語モデルを開発しています。
これにより、私たちが日々利用している検索エンジンや翻訳ツール、さらには電子メールの自動返信などにもLLMが活用されています。
生成AIとの違い
出典:NECソリューションイノベータ
生成AIは、テキスト・画像・音声などを自律的に生成できるAI技術の総称です。つまり、LLMは生成AIの一種です。
生成AI全体と比較すると、以下のような違いがあります。
項目 |
LLM(大規模言語モデル) |
生成AI(一般) |
主な用途 |
テキスト生成・要約・翻訳 |
画像・動画・音楽生成など幅広い分野 |
代表的な技術 |
GPT, BERT, T5 |
DALL·E, Stable Diffusion, Midjourney |
入力 |
テキスト |
テキスト、画像、音声など |
簡単に言えば、LLMは「言葉を扱う生成AI」であり、生成AI全体は「画像や音楽なども含む幅広いコンテンツを生み出すAI」と考えると分かりやすいでしょう。
SLM(小規模言語モデル)との違い
最近は、SLM(Small Language Model)というコンパクトなモデルもLLMと対をなすキーワードして注目されています。SLMはSmall Language Model(小規模言語モデル)で、LLMとの比較は以下のようになっています。
項目 |
LLM(大規模言語モデル) |
SLM(小規模言語モデル) |
パラメータ数 |
数十億〜数千億 |
数百万〜数億 |
学習コスト |
高い |
低い |
処理速度 |
比較的遅い |
高速 |
主な用途 |
高度な文章生成・対話 |
組み込みAI・省エネAI |
SLMは、小型デバイスやエッジAI(スマートフォンやIoTデバイスなど)での活用を目的としており、省エネルギーでありながら、特定のタスクに特化した性能を発揮します。
LLMの仕組み
LLMの基本的な仕組みは「Transformer」と呼ばれるアーキテクチャを活用しています。Transformerは自己注意機構(Self-Attention)を使って、文章内の単語の関係を効率よく理解します。
出典:NECソリューションイノベータ
大規模言語モデル(LLM)がどのようにテキストを理解し、生成するのかを、5つのステップに分けて説明します。
STEP 1: トークン化(Tokenization)
まず、テキストデータを「トークン」と呼ばれる最小単位に分割します。
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例:「私はAIです。」 → ["私", "は", "AI", "です", "。"]
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LLMは単語単位やサブワード単位でテキストを処理するため、トークン化 は重要な前処理です。
STEP 2: ベクトル化(Vectorization)
トークン化した単語を、数値データ(ベクトル) に変換します。
STEP 3: ニューラルネットワークによる特徴抽出
ニューラルネットワークを用いて、ベクトル化されたデータの特徴を学習します。
STEP 4: 文脈理解(Contextual Understanding)
学習したデータをもとに、文章の意味や意図を深く理解します。
STEP 5: デコード(Decoding)
最後に、理解したデータを基に、自然な文章を生成します。
このプロセスにより、検索エンジン、チャットボット、文章要約など、さまざまな応用が可能となります。
LLMの種類
代表的なLLM(大規模言語モデル)の種類について、以下のようなものがあります。
1. OpenAI GPTシリーズ
2. Google Gemini(旧Bard)シリーズ
3. Meta(旧Facebook) LLaMAシリーズ
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LLaMA 3(2024年リリース予定)
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LLaMA 2(オープンソースのLLM)
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用途: 研究開発、企業向けAI、軽量LLM
4. Anthropic Claudeシリーズ
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Claude 3(2024年最新モデル)
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Claude 2.1(前世代)
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用途: 安全性の高いAI対話、倫理的な応答重視
5. Mistralシリーズ
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Mistral 7B(軽量・高性能なオープンモデル)
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Mixtral 8x7B(MoE技術採用で効率化)
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用途: オープンソースAI、カスタマイズ可能な対話AI
6.Google BERTシリーズ
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BERT(2018年発表)
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RoBERTa(Facebookが改良)
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用途:検索エンジン、テキスト分類、感情分析など
7. その他のLLM
これらのモデルは、それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて活用されています。
LLMの用途
LLMはさまざまな分野で活用されています。
特に、最近は医療分野や法律文書の作成にも利用され、より正確な情報を効率的に提供できるようになっています。
LLMの課題
LLMにはいくつかの課題があります。
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誤情報の生成:事実とは異なる情報を出す可能性
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倫理的問題:バイアスや差別的な表現の問題
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高い計算コスト:大規模なGPUリソースが必要
LLMの精度を向上させるためには、データのクレンジングや透明性のある学習プロセスが不可欠です。
まとめ
LLMは今後のAI技術の中核を担う存在です。ChatGPTやGoogle Bardのような対話型AIから、GitHub Copilotのようなプログラミング支援ツールまで、その活用範囲は広がり続けています。しかし、誤情報や倫理的な問題など、解決すべき課題も多くあります。
今後もLLMの進化を見守りながら、適切に活用していくことが重要ですね!