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Llamaとは?大規模言語モデルLlamaシリーズ徹底解説

作成者: 仲山 隼人 (Hayato Nakayama)|25/04/30 13:07

 

 

最近、AI分野で「Llama(ラマ)」というモデルの名前を耳にする機会が増えていませんか?ChatGPT(GPT-4)などの登場で盛り上がる大規模言語モデル(LLM)競争の中、Meta社(旧Facebook)の開発したLlamaシリーズはオープンなアプローチで注目を集め、AI業界のトレンドとなっています。
 
この記事では、Llamaとは何か、その各バージョンの特徴や他の主要モデルとの違い、活用方法までをわかりやすく解説します。最新情報や話題性の高いポイントも交えますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
 
きっとLlamaの全体像と魅力が理解できるはずです。
 
 
 
 
 
 
 
 

Llamaとは?

 
 
 
 
 
出典:Wikipedia
 
Llama(ラマ)とは、Meta(旧Facebook)が開発した大規模言語モデル(LLM)シリーズです。
文章生成、対話、プログラミング支援など幅広いタスクに対応し、特にオープンな提供形態が特徴です。
 
一般に、ChatGPTに使われるGPT-4のようなモデルはクローズド(非公開)ですが、Llamaは研究者や開発者向けにモデルの重みを公開し、自由に扱える(※条件付き)点で画期的です。
最新のLlama 3・Llama 4では、性能も飛躍的に向上し、世界トップレベルのAIモデルと競り合う存在となっています。オープン性と高性能を兼ね備えた、今最も注目すべきAIモデルシリーズと言えるでしょう。
 
 
 

大規模言語モデルとは?

 
 
 
大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)とは、膨大なテキストデータを学習して、人間のように自然な文章を生成できるAIモデルのことです。質問への回答、文章作成、翻訳、要約など、幅広いタスクをこなす能力を持っています。
 
「大規模」と呼ばれる理由は、数十億〜数千億ものパラメータ(学習項目)を持ち、非常に高い精度で言語理解と生成を行える点にあります。
 
 
 
 
 
 
 

Llamaシリーズのバージョン概要

LlamaはMeta社によって2023年から公開されている大規模言語モデルのファミリーです。以下では各バージョンごとの概要を紹介します。
 
 

Llama(初代モデル)

 
初代LLaMAは2023年2月に発表されたモデルです。パラメータ規模は7億~650億(7B, 13B, 33B, 65B)と複数のサイズが用意され、当時最先端だったGPT-3に匹敵する性能をはるかに小さいモデルで達成し注目されました。
 
初代Llamaは「誰もが使える強力な言語モデル」の先駆けとなり、以降のシリーズ展開につながっていきます。
 
 
 
 

Llama 2

 
Llama 2は2023年7月に公開された第2世代モデルです。初代同様に7B、13B、70Bという複数サイズのモデルが提供され、加えて人間のフィードバックで調整されたチャット向けチューニング版(Llama 2-Chat)もリリースされました。
 
Llama 2ではライセンスが改訂され、研究目的だけでなく一部商用利用も可能なコミュニティライセンスとなっています。Meta社はMicrosoftと提携し、Llama 2をAzureクラウド上で利用可能にするなど普及を後押ししました。
 
 
 
 

Llama 3

 
Llama 3は2024年4月に発表された第3世代モデルです。Llama 3では性能面・機能面で大きな強化が図られています。画像データを含むマルチモーダル学習が導入され、プログラミング用データも大量投入された結果、コード生成や論理的推論能力が向上しました。
 
スマートグラス上でカメラ映像中の物体を認識して質問に答える機能にもLlama 3が活用されるなど、実用展開が進んだ世代と言えます。
 
 
 
 

Llama 4

 
出典:Meta
 
Llama 4は2025年4月にリリースされた最新世代モデルです。
実際に2025年4月5日に公開されたLlama 4は、リーク通りMoEを導入したモデルであり、「Llama 4 Scout」「Llama 4 Maverick」「Llama 4 Behemoth」という3種類のバリエーションから構成されています。
 
Llama 4 Scoutは総パラメータ数1,090億の中から必要な約170億パラメータ(16専門家ブロック)だけを活性化させて動作する軽量モデルで、コンテキスト長は驚異の1,000万トークンに及びます。
Llama 4 Maverickは総パラメータ数4,000億・活性化170億というモデルで、マルチモーダル(画像・テキスト)に対応しつつ文脈長100万トークンを扱える性能を持ちます。
これら2モデルは、Meta社が社内で開発したLlama 4 Behemoth(総パラメータ約2兆・活性化2,880億)という超巨大モデルを蒸留して得られたものです。Behemoth自体は「世界で最も賢いLLMの一つ」と謳われる実験的モデルで、2025年4月時点ではまだ訓練継続中で詳細は公開されていません。
 
Llama 4により、Llamaシリーズはスパース化技術による高効率化超長文コンテキスト処理という新機軸を打ち出し、オープンアクセスなLLMとしてさらなる進化を遂げています。
 
 
 
 

Llamaの特徴

 
 
Llamaシリーズの主な特徴を、いくつかの観点から具体的に見てみましょう。
 
 

超高性能

 
各世代のLlamaは、高度なタスク処理能力を持つよう最適化されています。
 
特に大規模モデルでは高い性能を示し、例えばLlama 3では学習データを7倍に増強し品質向上を図った結果、70BモデルでGoogleのGeminiやAnthropicのClaude 3といった競合の無料モデルを多くの指標で凌駕したと報告されています。
 
最新のLlama 4においてMeta社は、いくつかのベンチマークでGPT-4に匹敵あるいは上回る性能を示したと主張しています(※社内評価に基づく発表)。
 
出典:Meta
 
 
総じて、オープンアクセス可能なモデルとしてはLlamaシリーズは現状トップクラスの性能を備えていることは間違いありません。
 
 
 
 

軽量・省リソース

 
Llamaシリーズはモデルの効率性にも優れています。
アーキテクチャ上の工夫により、同規模の他モデルと比べ少ない計算資源で動作可能な点は大きな強みです。
 
例えばLlama 3では学習データを7倍に増強し品質向上を図った結果、70BモデルでGoogleのGeminiやAnthropicのClaude 3といった競合の無料モデルを多くの指標で凌駕したと報告されています。
 
先述のとおり、Llama 4 Scoutは単一GPU上で動作可能で、従来は数十億規模モデルでも困難だった1000万トークンという超長文も処理できます。
 
大規模モデル=高性能だが扱いが重い、というこれまでの常識を覆しつつある点で、Llamaは性能と効率のバランスに秀でたシリーズと言えるでしょう。
 
 
 
 

オープン性

 
Llama最大の特徴は何と言ってもそのオープン性です。
モデルの重み(ウェイト)が一般に公開されており、研究者や開発者が自由にダウンロードしてローカル環境で利用・微調整できるようになっています。
 
例えばHugging Faceのモデル公開ページでは、Llama 2やLlama 3の派生モデルが 85,000件以上 もコミュニティによって公開されており、その数は年初から5倍に増えました。これは世界中の開発者がLlamaを基に独自の改良モデル(対話特化モデル、専門領域知識を付与したモデルなど)を次々と生み出していることを意味します。
 
 
 
 

ライセンス

 
一方で、Llamaは完全な「オープンソース」というわけではない点に注意が必要です。
 
Meta社はLlamaを「オープンソース」と称していますが、実際には独自の利用許諾である「Meta Llama Community License」に基づき提供されるソース公開(Source-available)モデルです。このライセンスでは商用利用も一定条件下で許可されていますが、軍事目的への利用は禁止されるなど明確な利用制限が設けられています。
 
そのため、オープンソースの定義を策定するOSI(Open Source Initiative)からは「Llamaはオープンソースとは言えない」との指摘もなされています。
 
 
 
 

自己責任セーフティ

 
Llamaシリーズはオープンな分、出力の安全性管理や調整がユーザー側に委ねられる面があります。
 
たとえばChatGPTのようなサービスでは運営元が有害発言のフィルターを施していますが、Llamaをそのまま使う場合は適切なフィルタリングや追加調教を自分で行う必要があります。実際、開発者からはLlama 2 Chatにおいて「質問の意図を取り違え、危険な出力をしそうになった」ケースも報告されています。
 
このように、汎用モデルゆえに文脈理解や安全対策が不十分な場面もあり得ます。ただし、これらはオープンモデルに限らず閉じたモデルでも起こり得る問題ではあります。強力なモデルであるだけに使う側が責任を持って制御することが求められます。
 
 
 
 
 

他の主要LLMとの比較

Llamaと主要な大規模言語モデルについて、ベンチマークスコアや特徴を比較します。
 
 
 
 

Llama 4(Meta)

超長文(最大1000万トークン)対応とオープン性が最大の特徴。
性能はGPT-4級に迫り、自由にカスタマイズできる開発者向けモデルです。

 

GPT-4o(OpenAI)

出典:Wikipedia

マルチモーダル(テキスト・画像・音声)をリアルタイムで処理できる万能型。
最高水準の汎用性能だが、クローズド&利用はAPI経由のみです。

 

Claude 3.5(Anthropic)

出典:Wikipedia

長文処理と安全性に特化し、数学・論理推論でトップクラスの性能。
人間に近い自然な回答が得意だが、クローズドモデルです。

 

Gemini 1.5 Pro(Google DeepMind)

出典:Wikipedia

画像・音声・動画までこなす超マルチモーダルAI。
長文対応(100万トークン)にも強いが、まだ若干安定性に課題あり。

 

Amazon Nova Pro

出典:Wikipedia

コスト効率と堅実な知識・数学性能に優れた実用型モデル。
ClaudeやGPT-4級性能だが、目立った尖りは少なく堅実タイプです。

 

 

Llamaの使い方(ローカル・API・クラウド)

Llamaを実際に使うにはいくつかのパターンがあります。ローカル環境で直接モデルを動かす方法から、API経由でサービスとして利用する方法、そしてクラウド上でホスティングする方法まで、それぞれ概要を説明します。
 
 

ローカル環境で利用する

 
LlamaのモデルはHugging Faceなどからダウンロードできるため、自分のPCやサーバーに必要な環境を整えればオフラインでモデルを動かすことが可能です。

1.モデルの入手

Hugging FaceなどからLlamaモデルの重み(weight)をダウンロードする。

 

2.実行環境の用意

Python環境+PyTorch、もしくは軽量版llama.cppをインストールする。

 

3.モデルロード

コマンドラインまたはスクリプトから、ダウンロードしたモデルファイルを読み込ませる。

 

4.チャット開始

ターミナルから入力を受け付け、Llamaに応答させる簡易チャットボットが起動できる。
 
 
 
 

API経由で利用する

 
自前で環境構築する手間をかけずにLlamaを試したい場合、APIサービス経由で利用する方法もあります。Meta社自体は一般向けの公式APIを提供していませんが、サードパーティによるホスティングオープンソースのAPIサーバーを利用してLlamaにアクセスできます。

1.Hugging Faceアカウント登録

無料/有料プランから選択してアカウントを作成。

 

2.Inference APIを探す

Hugging Faceの「Model Hub」で「Llama 2」「Llama 3」を検索し、「Inference API」利用可能モデルを探す。

 

3.APIキー取得

プロジェクト設定から個別のAPIトークンを発行。

 

4.リクエスト送信

curlコマンドやPythonからエンドポイントにPOSTリクエストを送ると、応答が返ってくる。
 
 
 
 

クラウド上でホスティングする

 
開発用途や本番システム組み込みのためにLlamaをクラウド上で動かす選択肢も有力です。主要クラウドプロバイダ各社はLlamaなど有力なオープンモデルをいち早く自社プラットフォームに取り込んでおり、開発者が利用しやすい環境を提供しています。

1.クラウドアカウント作成

AWS(Amazon SageMaker)、Azure(Azure Machine Learning)などにサインアップ。

 

2.Llamaモデルを選択

各クラウドの「ジャンプスタート」機能や「モデルハブ」からLlama 2 / 3などを選択。

 

3.インスタンス作成

GPU搭載の仮想マシンを立ち上げ、選択したモデルをデプロイする。

 

4.API経由で利用

クラウドが自動発行するエンドポイントURLに、リクエストを送信してLlamaを呼び出す。
こうしたエコシステムも整いつつあるため、用途に応じてローカル・API・クラウドを使い分けられる柔軟性もLlamaの魅力と言えます。
 
 
 
 

Llamaの活用シーン

Llamaは汎用的な言語モデルですので、活用シーンも多岐にわたります。その中でも代表的な例をいくつか挙げてみましょう。
 
 

チャットボット/AIアシスタント

 
Llamaやその派生モデルを用いて、ユーザーと対話するチャットボットを構築できます。
 
例えば社内問い合わせ対応の自動化、カスタマーサポートのチャット応答などによく利用されます。実際、Meta社自身もLlama 3をベースにしたAIアシスタント「Meta AI」を開発し、Facebook MessengerやWhatsApp上でユーザーの質問に答える実験を行っています。
 
このようにLlamaは対話エージェントとして、人間の相談相手やガイド役を務める用途で盛んに活用されています。
 
 
 
 

文章生成・要約

 
ブログ記事の下書きやレポート作成補助など、人間のライティングを支援する文章生成AIとしてもLlamaは活躍しています。
 
Llama 2-Chatのような対話調整済みモデルにプロンプト(指示文)を与えると、記事のイントロダクション案や製品説明文などを自動生成してくれます。特に専門分野の知識を学習させたモデルであれば、専門用語を盛り込んだ高度な文章も作成可能です。
 
また長文テキストの自動要約も得意分野の一つです。Claudeなど他モデルと比べると標準のLlama 2は文脈長が短め(4Kトークン)でしたが、Llama 4では桁違いの長文入力が可能になったため、大量のドキュメントを一挙に分析・要約するような使い方も今後広まるでしょう。
 
 
 
 
 

コード補完・生成

 
プログラミング領域での活用も見逃せません。
Meta社はLlama 2をベースに、コード生成に特化した派生モデルCode Llamaを2023年8月に公開しました。7B・13B・34Bの3サイズがあり、ソースコード上で微調整されているためプログラミングにおける高度な補完やバグ修正提案が可能です。
 
Python専用に最適化したバージョンや、自然言語指示からコードを生成する指示特化版など複数の派生も提供されています。開発現場では、このCode Llamaや他のLlamaベースモデルをAIペアプログラマー的に利用する動きがあります。
 
 
 
Code Llamaを使ったコード補完のイメージ。対話形式で「CSVファイルを読み込んで相関ヒートマップを描画するコードを書いて」と指示すると、Pythonのコードスニペットを生成してくれる。
 
 
 
 

その他の活用例

 
上記以外にも、創造的文章の生成(ストーリーや詩の作成)、知識検索(大量データから質問に答える)、翻訳や校正教育分野でのチューター役など、Llamaの応用範囲は非常に幅広いです。
 
特にオープンソースコミュニティにより各分野特化型のモデルが次々登場しているため、「◯◯に強いLlama派生モデル」を探せば大抵のニーズに合致するモデルが見つかる状況です。
 
 
 
 

まとめ

Llamaシリーズは公開から僅か2年足らずで飛躍的な進化を遂げ、AI業界に新風を吹き込んできました。その将来性は非常に高いと言えます。Meta社は「今後のバージョンではより高度な推論やマルチモーダル対応を実現し、ユーザーの生活を幅広く助けるAIを目指す」と述べており、実際Llama 4でその片鱗が示されました。
今後はプロプライエタリな最先端モデルとオープンなコミュニティ主導モデルが互いに刺激し合いながらAIの進歩が進んでいくと考えられます。
 
Llamaシリーズは「AIの民主化」を体現する存在としてこれからも発展が期待されます。オープンなコミュニティの力で短期間に洗練されてきたその歩みを見ると、今後も驚くような成果が生まれるかもしれません。最新動向にアンテナを張りつつ、適切に活用していくことで、私たちの生活やビジネスに役立つ素晴らしいAIソリューションを創出していきましょう。